機動戦艦ナデシコ 逆行のミナト
第七話外伝 バレンタインスペシャル いつか渡す『チョコレート』
「大丈夫。アキト君はちゃんとルリルリのチョコを受け取ってくれるわよ」
「そ、そうでしょうか……?」
「そうよ。じゃあお姉さんのところでアキト君にあげるチョコを作りましょう」
そう言ってミナトはルリを自室の簡易キッチンに連れて行った。
「じゃあまずはエプロンの準備ね(はぁと)」
ミナトはそう言ってルリにエプロンを着せる。
「……ミナトさん……」
「なぁに?」
「なんでこんな格好を……?」
「あら? お料理するときはエプロンを着けるのは……」
「違います! なんで裸でエプロンを着けなければいけないんですか!?」
そう! ルリは今、白いフリル付きエプロンと靴以外は身に着けていないのだ!!(御神酒さん画の『裸エプロンのルリ』のイメージです!)
「何言ってるの! ルリルリがこんな格好してまで作ってくれたチョコなら例えどんな状態だってアキト君は食べてくれるわよ!!」
いや、むしろ奪い合いだろう。殺し合いすら起きかねない……。
「すごく恥ずかしいんです!」
ルリの叫びに、ため息をつくミナト。
「仕方ないわね……」
「ミナトさん……」
安心するルリ。
しかし、我らがミナトさんはそんなに甘くはなかった!
「私もおんなじ格好するからそれでいいでしょ?」
「ダメです!!」
「え〜!? だってほら、ペアルック用に揃えたのよ〜!?」
と言って、すばやく服を脱ぐミナト。
その格好はルリと同じ裸エプロンだったのだ!!
もし男性クルーが見ていたら鼻血を噴くどころではない光景がそこに広がっていた……。
「ミナトさん! いいから服を着てください!」
そう言って自分も服を着るルリ。
ああ、もったいない……。
「さて。じゃあ気を取り直してやりましょうか」
「最初からそうして欲しかったです……」
制服の上にエプロンをつけた二人が簡易キッチンの前に立つ。
「じゃあ、まずはチョコの使い方からね。チョコって言うのは……」
この後、ミナトの説明が三十分以上続いたので、ここでは割愛します。
『説明が! 説明が私を呼んでるわ! 何処なの!? 誰なの!? 説明を求めているのは!?」
火星某所で騒ぐ人もいたが、これも割愛します。
「……と言う風にすれば、美味しいまま、自分だけのチョコが出来るのよ」
「結構簡単なんですね……」
簡単に作れそうな事に驚くルリ。
「そりゃあ、カカオから作ればとんでもなく手間が掛かるけど、確実に美味しくなるわけじゃないし……。出来合いのものでも一手間加えるだけで見栄えも良く
なるし、何よりルリルリはアキト君に美味しく食べてもらいたいんでしょう?」
「は、はい……」
ミナトの言葉に頷くルリ。
「なら問題なし! アキト君はビター系が好きだって言ってたから、ビターで全体を作って、アクセントでミルクチョコやホワイトチョコで飾りましょう」
「はい」
「じゃ、まずは湯煎から……」
なんだかんだで一時間ほど経って……。
「で、出来ました……」
「おめでと〜! よくやったわ〜!」
そこにはハート型に固まったビターチョコの上にミルクチョコで引いたラインとホワイトチョコの『St.Valentine’s Day to
AKITO』が……。
「後は冷やして固めてラッピングして渡すだけね」
ウィンクするミナト。
「はい。……でもミナトさんはどうするんですか? そんなにたくさん作って……」
ルリの視線の先には小さな器に入ったたくさんのチョコが置いてあった。
「ああ、あれ? 男性クルー全員分の義理チョコよ」
「なんでまた……」
ルリがよく判らない、と言った顔で尋ねる。
確かに初めてのルリとしてはアキトに渡す分だけで十分だろう。
しかし、このバレンタインデーと言うのは、日本の男にとって死活問題になる時があるのを口で説明するのは難しいとミナトは考えている。
その為、状況だけ教える事にした。
「あのね……バレンタインデーにチョコを貰えない人と貰える人が出ると、貰える人がいじめられるのよ。一日だけだけどね」
「なんでまた……」
呆れるルリ。
「まあ、いうなれば嫉妬、かしらね? 特に可愛い女の子からチョコを貰えた人はいじめられるのよ。ルリルリはアキト君をいじめられたい?」
「そんなの嫌です!」
思わず語気が強くなるルリ。
「はいはい。だから皆にあげてそんな事無いようにしようってこと。ルリルリみたいに可愛い子から貰えるアキト君はいいかもしれないけど、ウリピーたち整備
班は貰えない人多そうだしね〜」
ボンッ!
と、赤くなるルリに微笑むミナト。
「だから私が皆にあげておくわ。そうすれば誰も悲しまないもの」
そのミナトの横顔を尊敬の目で見るルリがいた……。
その後、冷やしたチョコをラッピングして作業は終了した。
初めての作業、初めてのイベントに興奮したルリはなかなか寝付けず……、翌日寝坊してしまうのだった……。
そして二月十四日。
「ミナトさん……」
「なあに、ルリルリ?」
「バレンタインデーって女性が男性にチョコを贈る日なんですよね?」
「日本では基本的にね」
「アレはどういうことなんでしょうか……?」
ルリの視線の先には……両手に箱や包みを抱えたリョーコが通り過ぎようとしていた。
勿論全ての箱や包みに『リョーコさまへ(はぁと)』とか『お姉さまへ LOVE!』とか書かれたカードが付いていたのは言うまでもない(笑)。
「好きな人なら別に構わないのよ。女子高じゃよくある話ね」
「ミナトさん、女子高の出身なんですか?」
驚きのルリ。……いや、君への可愛がりの手馴れ方を見れば判りそうだが……。
「ええ……。この季節は太りそうでいつも怖かったわ……」
その顔はかつての恐怖を思い出しているようだった……。
その後、ルリはアキトにチョコを渡すことに成功し、アキトは義理以外のチョコのゲットを喜んだ。
なお、ミナトがルリチョコにこっそり添付した写真を見たアキトが、チョコを食べる前に鼻血を噴いたのはアキトとミナトだけの秘密である(笑)。
また、ミナトが男性クルーすべてにチョコを配ったが、そのチョコの包み紙には
『ホワイトデーには三倍返しよろしく(はぁと)』
と書いてあったのは、ルリには秘密である……。
あとがき
喜竹夏道です。
バレンタイン記念として「ナデシコ 逆行のミナト」でのバレンタイン風景を入れてみました。
あのルリチョコなら私も欲しいです!(血涙!)
いや! 犯罪と判っていてもルリルリごと食べてしまいそうでふ!!
……すいません。興奮しすぎて台詞噛みました……。
……でも現実はつらいんですよね……。
食べる側の都合を考えたチョコがもらえないのが現状です……。
でかい雪ダルマ型とか動物型とか……。口に入れづらいのをもらう事が多いです。
皆様もチョコの食べすぎには注意しましょう。
第八話は少し待ってください。
それからWeb拍手、いつも有難うございます。
前話のWeb拍手で「ルリがユートピアに行くのはまずいんじゃ?」という意見がありましたが、「ナデシコのお気楽さで」、ということも理解して頂き多謝で
す。
実はルリをユートピアに連れて行った理由はもう一つありまして、それは次回の話の中で明らかにします。
まあ、実際にオモイカネはナデシコの制御を司っていますが、ルリは柔軟な対応をするためのオペレーター、と私は考えていまして、ある程度パターン化された
行動ならオモイカネだけでも何とかなると判断しての演出です。
追伸。
いやーやっと高機動ゲルググでました。(2008/1/23)
この一ヶ月、長かった……。気がついたら階級は一等兵から少佐になってました。
おまけに初期各カテゴリー機体はセッティングフルコンプ。
次はゴッグとトロとドムとタンクとザクスナイパーをローテーションでセッティング&機体コンプしていこうと思います。
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