夜天光のバレンタイン
ここは北辰の隠れ家……というか公園の外れに住んでたと思われる人の物件を拝借(ぶんどった)場所。
「……夜天光、帰ったぞ」
――し〜ん。
いつもなら飛びついてくるハズの夜天光はおらず、大きなリボンの装飾のされた箱が部屋の中央に鎮座していた。
「夜天光は居ないのか……む、なんだこれは?」
いぶかしむ北辰、ここに住み始めてまだ日も浅く、北辰の様な怪しい奴が居る事もあって近隣の住人が近づく事も無い。
そんなボロ家に似つかわしくない装飾された箱、むしろ不自然極まりない状況である。
そして正面には張り紙がされており、こう書かれていた。
――親愛なる北辰様へ。
「――!! こ、これはなんだ。誰の仕業だ……まさかテンカワアキトの罠かっ!?
いや、しかし、まだココはきゃつ等には知られていない筈、いやしかし……」
いつも冷静が心情の北辰も流石に困惑する。
まぁ、こっちの世界ではまともな(?)知り合いもテンカワアキト以外居ない訳で、当たり前の反応なのだ。
「中身は何だ? 爆弾か何かか? いや、きゃつならそんな回りくどい事せず正面から攻めて来る筈……
しかし、きゃつも策を練らぬ訳でもない……」
(クスクス……ほっくん早く開けてくれないかな)
しばし思案するも、結局良い案は浮かばなかったらしく――
「我の体の殆どは機械、多少の爆発なぞなんとでもなろう」
諦めたのか、開き直ったのか、リボンを解く北辰。
シュル、シュル。
「じゃ――――んっ!」
「ぶほぁ!?」
「ほっくん! ハッピーバレンタインッ!!」
爆弾等のトラップだと思い込んでいた北辰の前に現れたのは、北辰の相棒である夜天光……
しかもリボン以外体につけていない、いわゆる“私がプレゼント”仕様。
「ほっくん、びっくりしたぁ?」
満面の笑みを浮かべ北辰の反応を待つ夜天光。
「夜天光、なんだその格好は……」
何故か頬を染め、夜天光を見ないようにしつつ北辰は聞いた。
「んとねぇ、この前あっくん達に会った時、今日がバレンタインデーとか言う日で
好きな人に贈り物する日なんだって」
「ほぅ、その様な風習がココにはあるのか」
「でね、やーはほっくんが大好きだから、贈り物しなきゃって思ったんだけど
何もあげるものが無いから、やーをプレゼントする事にしたの♪」
説明に納得するも、どこか落ち着かず肩をフルフル震わせている。
「それで、その様な破廉恥極まりない姿で現れたという事か……」
「うぅん、これはあっくんと一緒に居た子達に教わったの
こうすればどんな男でもイチコロだって♪」
「リボンも包装も手伝ってくれたんだよぉ♪」
それは一部の方々だけと思うが割合。
「馬鹿者! その様な格好、我が喜ぶと思ったか!!」
「ひゃぅっ!?」
「ナレも木連女子ならば恥を知れ!
そもそも女子とは奥ゆかしく、恥じらいをもち(中略)そういものなのだ!!」
暗部に所属してた割りに大和撫子について北辰は熱く語りだした。
「やーはスレイブだよぉ……」
「そんな事はど「俺達の贈り物は堪能できたか?」――むっ!!」
夜天光への力説を止められ慌てて北辰は振り向くと
そこには黒いバイザーに黒マントの怪しさ全開の男が、扉にもたれかかりこちらを見つめていた
「テンカワアキトッ!貴様っ何故ココにっ!?」
「あっくんだ〜」
「なに、お前のうろたえる姿を見に来たんだよ。
夜天光、コイツ怒ってる様に見えるが本心は喜んでるから思い切り甘えるといい」
そうアキトはニヤニヤ顔で夜天光にのたもうた。
それを聞いた夜天光は眼を煌かせ――
「ほっくん! 今日は放さないんだからね〜」
「こ、こら! 放さんか!!」
と、意気揚々と抱き付いてきた。しかも北辰が逃げない様にハッキングまで仕掛けて。
「クックック、その顔が見たかったんだよ。
さて、いい物も見れたし、俺はこれから用があるから戻る、夜天光と仲良くな」
「テンカワアキト……殺すっ! 必ず殺してやるぞぉぉぉっ!!」
体の自由を奪われながらも叫びまくる北辰を余所目に
アキトはこの後ガルデローベで自分も同じ目に合う事を予測しつつ――
「たまには俺の苦労も味わえ……」
そう言い残しその場を後にした。
そしてその日、公園と学園から男の叫びと艶のある女の声が絶えなかったという。
〈終わり〉
あとがきみたく
はじめまして
いつもはヘタレ絵ばかり描いてシルフェに寄生しているキュベレイです
2次?3次?SS……やっちまったよ……orz
ホントは[光あふるる場所]のパロディでコミック風にと描いてみたら
前半の段階で4P超える状態になりかけたので急遽SSチャレンジしてみたんですけど……難しいです……(;´Д`)
絵と文章の表現の差ってデカイですね
ツッコミ所盛り沢山の文章でしたが最後まで読んでくださってありがとうございました
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